介風見聞錄

台北に暮らす「介(すけ)」のあることないこと。

【嘉義・奮起湖】一度は乗りたい 文化と歴史伝える阿里山林業鉄路で日帰り旅行

介風見聞録にお越しいただき、有り難うございます。介(すけ)です。

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4月中旬のことなのですが、台湾南部の嘉義に2泊3日で遊びに行ってきました。2日目に阿里山林業鉄路に乗って、標高1403メートル地点の奮起湖まで日帰り旅行をしてきたので、その話をお伝えします。

【今は完全に観光鉄道となった阿里山森林鉄路】

阿里山一体は日本統治時代、豊富な森林資源があることから積極的に開発された歴史があります。伐採された木材を、縦貫線の駅があり、中継地点となる嘉義に運搬する林業鉄道としての役目を担ったのが、今回の主役となる1912年に開業した阿里山森林鉄路です。

北門駅近くには車両基地があり、自由に見学ができます

以前取材した際に聞いたところによると、以前は嘉義の市街地と阿里山を結ぶ道路がなく、阿里山に住む人々は通学や買い物などにもこの鉄道を利用していたんだとか。

ただ、戦後に阿里山公路と呼ばれる幹線道路が開通したり、台湾全土で樹木の伐採が禁止されたりして、本来の目的である林業鉄道としての役目は40年以上前に終えてしまっています。過去には廃止も検討されていたようですが、阿里山観光の柱となり得ることから、現在は観光鉄道として運行が続けられています。

現在は本線と神木、祝山、沼平の各支線が運行されています。嘉義と阿里山を結ぶ本線は大規模土砂災害の影響により十字路ー阿里山間で運休中(2022年7月4日現在)。平日1往復、休日最大3往復運転しています。あと、ツアー用の専用列車もあるようです。阿里山を起点とする支線は毎日数本が運転されています。

↓阿里山林業鉄路ウェブサイト

afrts.forest.gov.tw

【左右の激しい揺れでスリル満点 まるでジェットコースター】

今回僕が乗車したのは全車指定席の阿里山号。午前9時に嘉義を出発します。ほぼ毎日運行されているのはこの列車だけです。休日などにはこのほかに中興号という全車自由席の列車も運行されています。

チケットは事前にインターネットで予約。14日前から受け付けています。支払いと発券はコンビニで行いました。阿里山号の嘉義−奮起湖間の運賃は384元(約1741円)。

嘉義駅では台鉄の自動改札を通らず、右側の有人改札から構内に入ります。ただ、この時に検札はありません。出発後に車掌さんが検札してくれます。

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切り欠きホームにちょこんと待ち構える小さな列車。ナローゲージと呼ばれるレール幅が762ミリのコンパクトな鉄道なので、とても可愛らしいです。

座席は2−1で並んでいました。実際に着席してみると、前後は十分な広さがあり、窮屈さは感じませんでした。

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ただ、出発して間も無く驚いたのは、左右の揺れが想像以上に激しいということ。

事前の情報として、嘉義を出発して3駅目の竹崎までは平地を走り、その後から山を登っていくということは知っていたのですが、2駅目の北門を出た時点でぐわんぐわんと体が揺れ始めました。

乗り物酔いしやすい人は酔い止めをお忘れなく。でも、人間の体というのは面白いもので、そのうち慣れてきます。

【ゆっくりと、確かに変わっていく沿線風景】

ちなみに車内では車掌兼専門のガイドさんがずーっと案内をしてくれます。簡単な歴史や鉄道の特徴、沿線の周辺情報、見所などなど。運良くガイドさんと同じ先頭車両に乗り合わせることができれば、タブレットの交換作業などが見られ、興味深いです。

タブレット交換作業が見られる場所も少なくなりました

停車駅到着前には中国語、英語、日本語の車内放送もあります。日本人観光客にとっては嬉しい配慮ですね。

前述のように、嘉義から竹崎は平地を走ります。車窓から見える景色は市街地から次第にパイナップル畑などのどかな光景に変わり、竹崎を過ぎると、本格的に山を登っていきます。

速度は決して速くありませんが、ガイドさんの説明や駅にある標高を示す看板などを眺めていくと、着実に標高が高くなっていくのが分かります。ぐるぐると円を描きながら登っていく独立山では、すでに通過した場所が眼下に臨める場所がいくつもあり、短時間のうちに山を登ったことを実感できます。月並みな表現ですが、鉄道ってすごいんだなぁと感じられます。

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後、標高が上がるに連れて、初めは熱帯のジャングルのような雰囲気を醸し出す植物たち生い茂る車窓の光景が、竹林など、日本でも見られるような風景に変わっていくのも面白いポイントかなと思います。

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2時間30分の所要時間も飽きずに楽しめました。

【のんびりと散策が楽しめる奮起湖】

奮起湖には午前11時21分に到着。市内は汗ばむ陽気だったものの、奮起湖は羽織ものがあって快適なくらい。帰りの列車の時間は午後2時30分で約3時間ほどあり、散策を楽しみます。

奮起湖は林業が盛んだった頃の拠点として栄え、現在でも観光の拠点となっていて、阿里山の民宿を予約すると、この駅まで送迎してくれるところも多いようです。

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日帰りの場合は、駅周辺の老街と少し離れた老老街と呼ばれる集落がメインになるのですが、周回する道路が走っていて、歩くだけなら30分程度で回れます。

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で、奮起湖の名物といえば、「阿里山弁当」。まぁ台湾ではよくあるスペアリブ弁当です。かつて嘉義から片道7〜8時間かかっていた鉄道の乗客は、否が応でも食事の必要があり、その多くがこの弁当を食べていたことから、非常に歴史があるお弁当です。

弁当を販売するお店は数多くある中で今回僕が食べたのは、阿里山弁当でも特に有名だとされる奮起湖大飯店の弁当。折角来たのだからと、スペアリブと鳥もも肉がセットになったボリューム満点の弁当をオーダーしました。

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ニンニクの風味がしっかりした醤油タレで味つけられたお肉は、よくあるスペアリブ弁当のものとはちょっと違う味。あまり期待していなかったのですが、満足感がありました。

奮起湖にはこの他にももちもちのドーナツや温かくて優しい甘さの草餅、爽快感たっぷりの愛玉、すっきりとした味わいの阿里山コーヒーなど、いくつかの名物があります。後、たまたま買った茶葉を使ったどら焼きが香ばしくて想像以上に美味しかったです。お腹を空かせた状態でお越しください。

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最初は3時間の散策時間だと駆け足での散策になるかなと思ったのですが、実際には山で生きる人たちの暮らしぶりを垣間見ることができ、十分に楽しむ時間がありました。

【文化と歴史を知られる日帰り旅行】

帰りも2時間半かけて下山します。この列車にも車掌兼ガイドさんが乗車していますが案内は行きに比べて若干控えめ。阿里山観光の余韻に浸りつつ、少しずつ見慣れた現実世界に戻っていく、一抹の寂しさを感じながら山を降ります。

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嘉義到着は午後5時ごろ。台北に戻ることも可能ですし、嘉義市内で散策しながら夕食ということもでき、ちょうどいい時間で日帰りできるのは魅力的です。

ただ、実はこの阿里山鉄道、2017年の報道では、年間3億台湾元(約14億円)の赤字を出し続けているんだそう。もちろん、嘉義や阿里山にとって重要な観光の目玉であるということ、政府機関である林務局が関わっていることから、すぐさま廃止ということはなさそうですが、今後どうなるかは分かりません。

自動車では1時間ちょっとで登れてしまう奮起湖まで、わざわざ2時間半かけて登るというのは、正直非効率。一度は乗車する価値があると強く思いますが、乗車はお早めにと思います。

嘉義の発展を支えた阿里山鉄道の旅、歴史や文化を知られるアトラクションだと思うので、ぜひ嘉義旅行の際には組み込んでくださいね。

 

↓以前の旅行記はこちらからどうぞ

kennethqi.hatenablog.com

 

kennethqi.hatenablog.com

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