介風見聞錄

台北に暮らす「介(すけ)」のあることないこと。

【カルチャーショック】「金門に行ったことがないと、台湾に行ったこととは言えません」と感じた金門旅行

介風見聞録にお越しいただき、有り難うございます。介(すけ)です。

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11月6日から8日にかけて台湾の離島、金門に行ってきました。台湾で暮らして16年目になるのですが、金門を訪れたのは実は初めて。わずか2泊3日の短い旅ながらも、非常に強烈なカルチャーショックを受けて帰って来ました。台南駅の地下道に「台南に行ったことがないと、台湾に行ったこととは言えません」と日本語で書かれた観光PRポスターがあるのですが、ぶっちゃけ「金門に行ったことがないと、台湾に行ったこととは言えません」と思える旅になったので、そのカルチャーショックを受けた点を記して、ぜひ皆さんにも金門の旅に出かけてもらいたいと思います。

【土が赤い。空港を出てすぐに僕の知らない世界が広がっていた】

金門までは台北松山空港から国内線に乗って50分。移動については前回のブログをご参照ください。

kennethqi.hatenablog.com

金門空港でスクーターを借りて民宿に出発。幹線道路に出たところですぐに台湾本島との違いを感じ取りました。それは、土が赤いのと、ベージュの岩肌が露出した場所が多いということ。地形がすでに違い、なんとなく、僕の想像上の中国大陸に近いものがありました。畑は基本的に高粱が植えられていたほか、放牧されている牛たちもたくさん目にとまりました。さらに、赤レンガで造られた四合院の民家で形成されている集落群。極め付けは、現在もしっかりと対岸に睨みを利かせている軍施設。台湾本島では見慣れないものばかりで、目から入る新しい情報量の多さに圧倒されてしまいました。

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同じ離島である澎湖にはこれまでに2度、足を運んでいます。塩害により稲作が向かない土地柄なのは金門と一緒ですが、澎湖のホテルで働く人の話によると、それでも野菜が多少なりとも栽培されているんだとか。また、伝統建築も台湾本島とは様式が若干異なるのですが、すでに数が少なく、民家を始めとする今時の建物はほぼほぼ台湾本島と変わらないんです。

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金門の独自性を見ると、やはりここが中華民国の中の福建省であることを思い知らされます。そう、今では本島に暮らす台湾人はほとんど意識していないことだと思うのですが、金門と馬祖は中華民国の中でも福建省に属していて、日本統治時代を体験していない場所であるんです。現在では中華民国の福建省は凍結されているものの、裁判所の名称などに「福建省」の文字が今でも残されていて、知識としては以前からあったものの、実際に看板を目にすると、感慨深いものがありました。

【超繁栄しているアモイが目と鼻の先に見えた】

2日目には金門島の水頭港からフェリーに乗り、約10分離れた烈嶼(通称:小金門)へ。島の北側から北西側にかけては中国アモイ市に向かい合う場所で、直線距離はわずか5キロ。北京から遠く離れたこのアモイでも超高層ビルがいくつもそびえ立つ様子は、中国の国力を物語っているようで正直言って恐怖すら感じるほど。

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それとは対照的に、金門では伝統家屋で構成された集落がたくさん。それはとても美しい風景なのですが、対岸には近代的で先進的な、中国でもトップ20前後の規模の大都市が広がっている。こんな状況では否が応でも違いを実感してしまいます。もちろん、アモイの発展と金門ののどかさのどちらがいいというわけではないのですが、金門から船で30分の場所にあるアモイは、台北よりも身近に感じる人が多いのではないかと勝手ながらに想像してしまいました。台北に暮らす僕は、中国は別の国だし、近くて遠いイメージばかりを抱いていたのですが、目と鼻の先のアモイを見て、それがガラガラを音を立てて崩れていったのでした。

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【台湾本島との歴史と文化がそもそも違う】

金門の観光スポットを回って歴史を知り、日本統治時代を経験していないことや国共内戦時に中共軍が上陸して地上戦が行われたことなどを改めて目の当たりにすると、僕の知っている台湾に関する知識がほぼほぼ通用しないことに気づきました。

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台湾に来てからというもの、台湾に関することを学んで、自分なりに吸収してきたつもりでいたのですが、金門という地域はすっかり抜け落ちていたと、自分の弱い部分が浮き彫りになった気がします。

台湾はざっくりとおおまかに分別すれば、地域性では北部、中部、南部の「西半部」、と東部の「東半部」、そしてエスニックグループでは、本省人(閩南人と客家人)、外省人、原住民、平埔族、新住民で歴史や文化の違いがあるわけですが、このほかに、金門と金門人、さらに馬祖の違いが加わるのかもしれません。 

 

民主化が進んでから「台湾意識」というアイデンティティが芽生えて久しい台湾。本島とは遠く離れた金門の人々はどのようなアイデンティティを抱いているのか、本島の日本統治時代や戦後の二二八事件、白色テロに関する歴史認識やそれに対する感情はどうなのか、今後機会があれば、より一層深く調べてみる必要があるのかなと思いました。

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22県市ある台湾で最後の未踏の地となった馬祖にも必ず近いうちに足を運んで、まだ見ぬ台湾の姿を見られたらいいなと感じました。

「金門に行ったことがないと、台湾に行ったこととは言えません」。

実際金門に住む人は6〜8万人と言われ、2300万人の台湾の総人口からしてみるとごくごく少数派。それでも、金門の人々もれっきとした台湾を構成する人々の一部。驚きと発見があると思うので、台湾リピーターの方で、まだ行かれてない方は、是非とも足を運んでもらいたいなと思いました。

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