介風見聞錄

台北に暮らす「介(すけ)」のあることないこと。

【新竹・新埔】干し柿で有名な客家の街へ日帰り旅行

介風見聞録にお越しいただき、有り難うございます。介(すけ)です。

亜熱帯に属する台湾北部は、一応春夏秋冬の四季があるものの、日本と比べ、春と秋がとても短く感じられます。ただ、今年は秋がとても長く、例年よりも過ごしやすく感じられる日々が続いていました。(12月に入り冬らしくなりましたが)

そんな11月の末に、週末を利用して、新竹県新埔へ日帰り旅行をしてきました。台湾の中でもかなりマイナーな都市なのですが、非常に歴史のある場所なのと、最近インフルエンサーに人気の写真映えスポットがあり、楽しく観光してきました。

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【人口の約9割が客家人ののどかな街】

今回訪れた新竹県新埔。正直言って、今回訪問が決まるまで僕も全く知らない場所でした。というのも、鉄道や高速道路が通っていないのと、新埔という地名は実は台湾全土に結構よくある名前だったからです。

新埔鎮公所のウェブサイトを見ると元々は「吧哩嘓」と呼ばれ、平埔族が暮らしていた場所で、1784年頃に漢人が移住したそう。ただ、その直後の1786年には清朝統治に反対する彰化の閩南人・林爽文を中心とした反乱軍と清朝の間で争いが起き(林爽文事件)、清朝側に立った新埔を含む桃園・新竹・苗栗の客家人は義民軍と呼ばれる義勇軍を組織し抵抗したそう。最終的には清朝側の勝利で終結するのですが、その後戦死した勇士たちを祭る義勇廟(当時の名称は集義亭)が新埔に建立されると、新竹一帯の客家人の信仰の中心として発展。さらに茶葉や樟脳、サトウキビの生産でも栄え、かつては竹塹と呼ばれた新竹中心部と遜色ない都市の規模だったと言われているんだとか。

現在では農業が盛んで、夏に梨、冬にミカン、秋に干し柿が収穫・生産されています。特に干し柿は九降風と呼ばれる新竹名物の秋から冬の季節風と好天に恵まれた地理的条件から多く生産されていて、干し柿農園で行われる天日干しの様子が写真映えするということで近年特に大きな注目を集めています。

【まずは老街で客家料理をいただきます】

友人が運転する車で台北を10時30分に出発。週末の午前ということで高速道路が少々渋滞したものの、12時15分頃に新埔に到着しました。

今回訪れたのは老街(オールドストリート)の一つ、和平街の近くにある「聞香來小館」という客家料理レストラン。「粄條」と呼ばれるきしめんのような麺の焼きそば、茹でた豚の腸に大量の生姜とお酢を絡めた「薑絲大腸」、豆干にセロリ、イカなどを甘辛く炒めた「客家小炒」、からし菜を乾燥させた梅干菜と豚の角煮を合わせた「梅干扣肉」などなど、客家料理の定番メニューをいただきました。台北は意外と客家料理が食べられるレストランが多くないんですよね。なのでこういった代表的な料理があるだけで嬉しかったりします。

聞香來客家美食小館

新竹縣新埔鎮廣和路21號

(03)588-1998

月・火曜定休

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【趣ある老街をお散歩】

新埔を街歩きする時のメインストリートは和平街と成功街。和平街には伝統市場のほか、潘屋という地元の名主・潘家の三合院が非常に綺麗な状態で保存されているほか、家廟と呼ばれる大家族によって建立された私廟がいくつも残り、一目で清朝時代の建物が現存しているのが印象的で歴史を感じられます。これらの建物には今でも人が暮らしていて、一般への開放もなし。外観を覗かせていただく形になるのですが、伝統家屋が本来の形で使われ続けていることこそが本来あるべき姿なのかもしれません。

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伝統市場には、木の繊維で作った枕や椅子、籠など、なんとなく懐かしいグッズを売る雑貨屋さんや鮮やかな台湾フルーツを売る屋台、凄く古めかしいけど常連客で賑わう食堂など、薄暗いですがとても活気がありました。地方都市ならではの生活感溢れる光景が広がっていてとてもよかったです。

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バス通りの中正路にある老舗中華菓子屋さん兼パン屋さんの「呂順興餅店」にも足を運びました。「炸蛋麵包」(爆弾パン)と呼ばれるレモンのような形状の台湾独特のパンがあったり、タロイモやカボチャのお饅頭があったりと、昔懐かしい台湾のパンや中華菓子が売っているお店。観光客だけでなく地元の人も買い付けに来ていました。一緒に行った先輩はタロイモ饅頭をお土産にと購入していましたよ。

呂順興餅店

新竹縣新埔鎮中正路312號

(03)588-2232

6:30~22:30(日曜〜21:00)

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日本統治時代に新埔公学校だった新埔國小の横には、歴代の校長とその家族が暮らしたという日本家屋の校長宿舎が修復された上で残されていて、展示や交流イベントを行う多目的施設として利用されていました。まぁ、率直な感想を言うと、この手の宿舎は台湾全土にあって、造りもだいたい一緒。ですが、この地にも日本統治時代があったことを物語る大切な歴史的資産。保存、活用に尽力してくださった方々に敬意を払って参観することが大切なのかなぁと思っています。

新埔鎮宗祠客家文化導覽館

新竹縣新埔鎮中正路366號

(03)588-3909

8:30~16:30

日曜定休

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その裏手にあるのが、前述の林爽文事件の後に建立された義勇廟。裏山を少し登ったところにあるのでてっきり日本統治時代の神社後なのかなと思ったのですが、それよりも遥か前から存在していた名勝だったのでした。

義勇廟

新竹縣新埔鎮中正路776號

(03)588-1311

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もう一つの老街である成功街にも古い家屋がたくさんありました。そこで訪れたのは、日本統治時代から三代に渡って続く創業100年のアイスキャンディー屋さん「義順製冰廠」。たくさんのフレーバーがあるのですが、こちらの名物は新埔名産のキンカンアイス。

僕たちが訪れた際にもお店の傍で収穫されたキンカンの皮を剥く作業が行われていて店頭には爽やかな柑橘類の香りが漂っていました。

お値段はなんと破格の12元。

ほどよく甘くてえぐ味はなく、すっきりとした味を楽しみました。

義順製冰廠

新竹縣新埔鎮成功街99號

(03)588-2143

6:30~20:00

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【お待ちかねの干し柿観光工場】

そして新埔の老街から車で約5分にあるのが「味衛佳柿餅觀光農場」という干し柿の観光工場。徒歩でも山道を登りながら20〜30分で来れるみたいです。

僕たちが訪れたのは午後3時前の最混雑時間帯。駐車場もかなりの台数が停められるようになっていたのですが、10分ほど待ちました。観光バスで乗り付ける団体客も結構いて、老街よりも賑やか。柿や農産物を売る屋台もあり、まるで日本のお祭りのような感じでした。

観光農場といっても、敷地内には伝統家屋の三合院が鎮座していて、地方のちょっと規模の大きい農家にお邪魔したような感じ。ただ、一面に柿が天日干しされていて、本当に圧巻。どこでカメラを構えてもいい写真が撮れるといっても過言ではありません。

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ただ、かなりごった返しているので、ベストショットを撮ろうとすると色々大変かもしれません。おすすめは午前中の人が少ない時間帯だとか。

それでも、大量の柿に囲まれる不思議な空間で、加工している様子が間近に見らるのは、非日常でちょっとワクワクします。

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で、干し柿をいただきました。実は日本でも干し柿を食べた記憶がなく、日本との比較ができないのですが、「干し」と言っても半生なんですね。少し冷やされていて、まず一噛みすると大福に包まれた羊羹のような食感。それでいてさらに噛んでみると果肉がシャリシャリしていて面白いんです。台湾茶と合わせたら凄くおいしんだろうなぁと感じましたよ。客家人の友人は、柿のアイスキャンディーが美味しいんだよとオススメしてくれたのですが、その時僕はすでに台北への帰路についた頃。次回チャレンジしたいと思います。

あ、で、工場ではあったかい柿のお茶も振舞われていました。これまたほのかに柿の味がして美味。柿好きにはたまらない場所かもしれません。

味衛佳柿餅觀光農場

新竹縣新埔鎮旱坑路一段283巷53號

(03)589-2352

8:00~18:00(9月〜12月ごろの季節限定)

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【客家文化といえば擂茶も忘れてはいけません】

最後に訪れたのは、新埔老街から車で15分ほど、九芎湖と呼ばれる場所にある陳家休閒農場。客家名物の擂茶をいただきます。

擂茶の極意は自分でピーナツやゴマ、茶葉、砂糖などの材料をすり鉢で擦ること。顆粒のものがなくなり、油が出てペースト状になるまで擦るのですが、結構な重労働。以前某有名ブロガーに誘われ、一人で擦りすりしていたら、汗だくになり、30分近くかかりました。

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今回は友人らと分担したので割と早くできたのですが、それでも20分くらいかかったかと。普通のお茶よりも香ばしく、飲むスイーツのような感じ。お腹も適度に満たされます。

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こちらもグループで行ったらワイワイ楽しくお茶ができますよ〜。

陳家休閒農場

新竹縣新埔鎮照門里九芎湖6鄰29號

(03)589-0034

9:00~17:00(土日曜〜18:00)

 

新埔は新竹県北埔や苗栗県南庄と比べてかなり控えめな客家の街だったのですが、のどかさや落ち着きがあり、とても心地のいい旅ができました。

実は高鉄の新竹駅から近くてタクシーなら約20〜30分で到着できる距離。路線バスだと、新竹駅を起点に、途中竹北駅を経由する新竹客運の5619番バスで約40分。竹北駅からなら5621番バスも利用できて約20分で来られるみたいです。

干し柿の天日干しが見られるのは12月末まで。日帰り旅行をぜひ楽しんでくださいね〜。

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