介風見聞錄

台北に暮らす「介(すけ)」のあることないこと。

台湾で日常的にスクーター移動をしていて思うこと

介風見聞録にお越しいただき、有り難うございます。介(すけ)です。

2月21日に新北市内の北宜公路でスクーターに乗っていた日本人学生が台湾人男性の運転する大型バイクと衝突し、台湾人男性が死亡、日本人学生が意識不明の重体になる事故が起きました。3月22日の続報によると懸命の治療が続いているこということで、一刻も早い回復を祈るばかりです。

僕自身も、台湾で日常的にスクーターを乗り回していて事故が起きた現場も何度か通ったことがあり、一報を聞いて他人事には思えませんでした。今回はこの事故や台湾でスクーターを運転してみて感じたこと、思ったことを記したいと思います。

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【バイク乗りなら走ってみたい北宜公路】

今回事故が起きた北宜公路は、その名が示す通り台北(新店)と宜蘭を結ぶ幹線道路です。全長13キロに及ぶ雪山トンネルを通る高速道路「国道5号(蔣渭水高速道路)」が2006年に開通してから通行量は減ったと言われるものの、沿道には銀河洞、鱷魚島、坪林などの風光明媚な観光スポットが点在し、週末になるとツーリングやドライブに訪れる人が大勢います。

ほぼ全線が片側一車線の山道。大体の区間で制限速度は40キロ。僕はいつも木柵を出発すると深坑、石碇を通り、坪林から北宜公路に入って宜蘭の礁溪に行きます。所要時間は約2時間。沿道は緑深い山々の景色が美しく、新北市と宜蘭県の境にある展望台から一望した蘭陽平原と太平洋はいつ見ても感動的です。宜蘭側には「九彎十八拐」と呼ばれるヘアピンカーブが連続する「難所」があるのですが、近年になってカーブの改良や拡幅が行われて走りやすくなっているようで、実際に走破してみても法定速度を守っていれば特に危険を感じることはありませんでした。

ただ、初めて北宜公路を走破した後にバイク屋のおっちゃんに得意になって報告したところ「気をつけなよ」と半ば呆れ気味に言われ「ちゃんと法定速度を守ったよ」と口を尖らせて反論したら「守ってない奴が突っ込んでくるんだよ」と返され、何も言えなくなってしまいました。確かに週末になると多くの走り屋が出没し、それを目当てに沿道のドライブインにはたくさんのギャラリーやアマチュアカメラマンが集まる状態。当然事故も多く、ネットで検索すればいくらでも悲惨な事故のニュースや車載動画が出てきます。

それでも、街から山、山から海へと目まぐるしく変わる景色が楽しめ、標高が変わるごとに感じる温度差、走り終えた後の爽快感は、何物にも代えがたく、ツーリングの醍醐味が手軽に味わえるのが、北宜公路の魅力だと個人的には思います。今回事故に遭ってしまった留学生も、そんな魅力を味わいたかったのではないかなと思うと、本当に胸が張り裂けそうになります。

【スクーターはやっぱり便利。でも覚悟もしてる】

今回の事故について「危険な場所に行くのが悪い」「全ては自己責任、自業自得だ」と言う人がいるかもしれません。ツイッターを見てみると、台湾の交通マナーの悪さを指摘する声もとても多く、「日本人は台湾でスクーターに乗らないほうがいい」という意見が多数を占めています。

毎日運転していると、台湾人の運転には不思議な部分が多々見受けられ、目の前で事故が起きたことも1度や2度ではありません。旅行者は安易に台湾でスクーターを運転しようと考えないほうが無難だという考えは間違いないと思います。ただ、台湾で暮らしている人間として、これだけ便利な交通手段であるスクーターを利用しない手はないというのと、台北市の中心部以外の場所に住んでいたり、自動車を所有していない場合、スクーターがないと生活を送る上で不便極まりないということも事実です。むしろ台北市以外はスクーターや自動車がなかったら大変なんだろうなぁと思います。

それと、僕の場合はスクーターに乗ってから行動範囲が驚くほど広がって、それこそ台湾に興味のある日本人が行きたがる「ディープな場所」に行けるようになり、台湾に対する見識をさらに深められました。仕事の上でも移動時間の短縮ができ、効率が上がりました。金曜日の退勤後に陽明山まで温泉に入りに行くなんてこともしていて、生活が今まで以上に充実したかなとも感じています。

新北市板橋に住む台湾人と結婚した友人(日本人)も、逞しくスクーターを乗り回してお子さんの送り迎えをしたり、大きな公園まで遊びに行ったりしています。赤ちゃんから高齢者までを含めた国民1.5人に1台の割合でスクーターを所持していると言われる台湾。危険と隣り合わせではありますが、皆さんそれぞれの事情で覚悟の上で運転されているのだと思います。

ちなみに、僕はスクーター購入時、バイク屋のおっちゃんに頼んでドライブレコーダーを装着してもらいました。後方から突っ込まれる可能性もあるからと前後にカメラがあります。また、保険屋で働いている友人に頼んでスクーターの任意保険にも加入しています。万が一の際に相手と自分の両方を守れるように対策を取っているつもりです。

とはいうものの、今月22日のTVBSのニュースによると、日本人今回の事故では当事者のドライブレコーダーの記録媒体が破損してデータの読み取りができなかったらしく、もどかしさも感じます。

【台湾人の意識が変わるのを切に願う】

日本も昭和30年代や昭和50年代に交通戦争と呼ばれた時代があり、尊いたくさんの犠牲を払った上で、ようやく交通死亡事故が減少しました。とはいえ、名古屋の運転マナーは悪く、岡山ではウインカーを使わない人が多いとされるなど、現在でもそれなりに課題があります。そんな中で日本人が台湾の交通事情をとやかく言う資格はないような気がしますが、台湾で運転する身としては、やはり台湾の交通マナーと事故を誘発するような道路の設計も変わってほしいと思います。

台北では最近、一部の交差点で歩行者用信号が車両用信号よりも早く青に変わって、安全に横断歩道が渡れる時間が確保されるようになったり、歩行者優先の概念が強く叫ばれるようになり交差点での取り締まりが強化されるなど、少しずつ変化の兆しが見えています。

台湾にせっかく暮らしているのに「台湾の交通事情が劣悪だから、公共交通機関で行けるところしか行けない」というのではとても悲しいです。安全に対する意識は一朝一夕に変わるものではありません。それでも悲しい事故がなくなれば、在台日本人がもっと自由に台湾を移動でき、交流も深まると思うのです。これには台湾人ひとりひとりが問題を自覚して、安全運転への意識を高めてもらうことしか方法はないのですが、そんな社会にするために僕自身もこれまで以上に安全に気を配りながら、台湾を走りたいと思いました。

最後に、台湾に旅行に来るみなさんに口を酸っぱくしてお伝えしたいことがあります。台湾では歩行中の事故もとても多いです。以前の会社は日本人観光客の多いエリアにあり、横断歩道を渡る時に前しか見ない日本人観光客を多数お見かけしました。もちろん、日本ではそれで良いかもしれませんが、台湾では現状、車の来る方向も見て安全を確保してから渡って欲しいなと思います。

歩きスマホはもってのほかです。楽しい台湾旅行が台無しにならないように、どうか気をつけて街歩きを楽しんでくださいね。

 

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