「詰め込み仕様」。それはキャセイパシフィック航空のボーイング777-300ER型機のように座席幅の狭いエコノミークラス座席を配置し、乗客をギチギチに詰め込む機材の通称。

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この「詰め込み仕様」の機材、中国語では「奴隸艙」(奴隷クラス)などと呼ばれ、「擠如沙丁魚」(イワシのようにぎっしり)と形容されます。
キャセイはボーイング777型機導入当初こそ3−3−3配列だったものの、2018年から3−4−3への改修を始め、新型コロナの収束後にはどうやら全てのB777-300ER型機が詰め込み仕様になった模様です。
台湾アップルデイリーの18年の報道によれば、シートピッチは32インチ(約81センチ)で変わらないものの、幅が18.5インチ(約47センチ)から17インチ(約43センチ)に狭まっているんだそう。わずか4センチですが、座ってみると違いが悪い意味で実感できます。
キャセイに乗る際、この詰め込み仕様は極力避けていたのですが、2月に香港経由で日本へ帰省した時、3セクター全てで搭乗することになったので、その模様をお伝えします。
【ギリギリ苦痛は感じない 台北(桃園)→香港線】

この日搭乗したのは、台北発香港行きの始発便となる午前8時の便。旧正月連休が終わった翌週の日曜日で、てっきり乗客はあまりいないだろうと見込んでいたものの、どうやら香港乗り継ぎで遠方に向かう台湾人を中心に搭乗率は約9割でした。

毎度のことながら通路側に着席。お隣は小柄な方だったので圧迫感はなく安心。
早朝便ということもあり、乗客の多くが離陸を待たずしてウトウトし出すのが印象的でした。旅への高揚感が漂いながらも静かなキャビンというのはなんとなくユニークに感じられます。

離陸して30分程度で機内食の配布。台北搭載だという「豬肉味噌扁麵」一択。日本語なら豚挽き肉味噌あんかけ麺と言ったところでしょうか。サンドイッチが出されるだけだった以前に比べて、きちんと軽食が出されるのようになったのは、ささやかながらも嬉しい変化です。

甘じょっぱい味付け。油分が多いような気もしましたが、その分麺がくっつかずスルスルといただけました。
満腹になったところで眠気に襲われ、気づいたら香港に到着。2時間もかからない超短距離線はストレスをほぼ感じることなく目的地に到着できました。
【隣がいなくて快適 香港→東京(羽田)線】

香港に3日間滞在した後、改めて東京に向かいます。8時55分発の羽田行き。実はアフターコロナにキャセイの日本線に乗るのは今回が初めて。サービスがどう変わったか、特に意識して観察してみました。

ちなみにこの便の搭乗口はYの字型のターミナルのほぼ末端にある69番。少し奥の70番は5分早く出発するキャセイのマニラ便で、出発35分前くらいから搭乗が始まっていたのに対し、東京便は出発20分前から搭乗開始。なんとなくバタバタしていたマニラ便に対して、落ち着いた雰囲気の東京便。ビジネス客が多いのかなとも思ったのですが、香港に卒業旅行へ来ていたとみられる日本人大学生グループなどもいました。

搭乗率は7〜8割と言ったところ。ラッキーなことにお隣はいなかったので、ゆったりと座れました。離陸して10分後にベルトサインが消灯。免税品の販売がないことがわざわざアナウンスされました。必要なら機内WiFiを使ってオーダーしてねということのよう。

そして最初に水のサービス。そう、水です。以前はトレーにビールを含む複数種類のドリンクを用意して乗客に取ってもらう方式だったと記憶しているのですが、今回は完全に水。
確かに最近はプラスチックのコップが廃止されて外から中身が見えなくなったので、仮に複数種類のドリンクを用意しても乗客側が選ぶのに時間がかかることが容易に想像できます。だったらとにかく水でも渡しておけというスタンスは至極合理的。
とはいえ、前方のプレエコでは別のドリンクを頼んでいた人もいたので、あえて注文すれば対応してくれそうな感じではありました。エコノミーだと「この後の機内食の時間に持ってくるね」と言ってスルーされてしまいそうな気もしますが、詳細は不明です。

その後20分経って機内食配布。で、ここでも変化に気づいたのですが、CAさんが一人一人の乗客に対してものすごく丁寧に機内食の説明をするようになっていました。以前だったら早口な英語で選択を迫ってくるようなスピード感がありましたが、きちんと乗客に向き合うようになっていて、印象に残りました。

機内食はチキン焼きそばをオーダー。焼きそばと言っても日本のようなソースの味付けではなく、醤油を使った香港風。チキンがたくさん入っていて嬉しい。サラダはなく、カットフルーツがありました。そしてデザートにはハーゲンダッツを期待したのですが、ヨーグルト。十分美味しかったので満足です。
ドリンクは広東語でコーラを頼んだところ「後から持ってくるね」と言われ、食べ終わった頃にトニックウォーターを持ってきてくれました。一応炭酸なのでこれでヨシ。俺の発音が悪かったことにしませう。CAのお兄さんありがとう。

機内食トレー回収時に食後のコーヒーをいただきます。前に書いたかもなんですが、台湾系の航空会社と比べてキャセイのコーヒーはちょっとビターで美味しく感じるんですよね。ここは変わらないでいてくれてほっと安心。ホットだけに。
その後南西諸島あたりに到達した午前11時ごろに消灯。アナウンス通り免税品の販売もないのでそのまままったりした時間が続き、12時20分に降下開始。スムーズに着陸しました。

結果として、香港→羽田線は食事のサービスが一部簡素化されたものの、CAさんの接客を強化した印象を受けました。また詰め込み仕様でもお隣がいなければストレスはほぼないといえるかもしれません。
【満席は苦行の如し 東京(成田)→台北(桃園)】

台湾へ戻る便は金曜日午後3時20分成田発の台北経由香港行き。実は僕、予約をした際に日本のカレンダーを確認するのをすっかり失念していたんです。この日は天皇誕生日で日本は3連休の初日だったんですよね。しかも翌日は旧正月後に初めての満月となる元宵節で、台湾では恒例のスカイランタン上げが行われるイベントデーだったのでした。

それゆえ「満席」でございました。
その多くが台湾に向かう日本人客。僕の周りも日本人グループばかりでした。
ちなみに機内アナウンスは台北経由なのに英語と広東語だけ。普通話すらなし。この点は日本語を重視している台湾系の航空会社とは大きく違うなぁと感じます。
とはいえ、今回僕のエリアを担当してくれた香港人男性CAさんの日本語がとても流暢で、日本語、普通話、英語を駆使するだけでなく、目線を乗客に合わせていて、やはりとても丁寧に対応していました。

機内食の前にはやはり水のサービス。東京発台湾・香港便は台湾・香港発より所要時間が長くなりますが、それでもドリンクの種類が増えることはなく、提供されたのはやはり水。ないよりあった方が断然嬉しいのですが、ピーナツもなくなり、コストカットは切実な問題なんだろうなぁと思います。

機内食はチキンライスと海鮮パスタが選べ、チキンライスをチョイス。広東語で答えたら「お!廣東話講得好好嘅」(広東語お上手ですね)とお世辞を言われ「係咪台灣人啊?」(台湾人ですか?)と言われました。僕に日本人オーラはないようです。
中央の白米を挟んで左側のチキンは、焼いた後に醤油ベースのタレをかけたもも肉で、洋食っぽくてグッド。右側にはにんじんと白滝、しいたけ、ザーサイの煮物が置かれ、こちらは和風。どちらもご飯によく合いました。
そして香港からの便にはなかったサラダもありました。ツナに玉ねぎ、じゃがいもが入ったもの。フルーツはメロンが美味しかったです。

そしてハーゲンダッツもありましたよ。食後のコーヒーと一緒にありがたくいただきました。

実は免税品で買いたいものがあって、機内WiFiに接続しようかと思ったのですが、搭乗機にはWiFi未搭載だったようで、女性CAさんに免税品販売があるか問い合わせたところ、やはり「ない」との回答。CAさんもこの機材がWiFi未搭載だったことを知らなかったようで、結局お目当てのものは買えなかったのですが、忙しい中でも親切に対応してくださり、ありがたかったです。
【詰め込み仕様3連続の総括】

今回改めて3セクターで詰め込み仕様に座ってみて、その快適性が隣の乗客の有無や同行者の有無に大きく左右されることを実感させられました。
もちろん台北発券の航空券価格を見ると、キャセイは台湾系航空会社よりも安いことが多いのですが、だとしても窮屈さは否めません。台北ー成田線ではプレエコ設定がなく(今回のチケット購入時)、ビジネス以外の選択肢がないことも残念です。
どうやらチャイナエアラインやエバー航空にも3−4−3配列の777機材があるようで、チケット購入時にはきちんと機材も確認するべきだと強く思いました。
個人的には台北ー成田線にプレエコのある機材を導入してほしいと思います。
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