介風見聞錄

台北に暮らす「介(すけ)」のあることないこと。

【2020台湾LGBTパレード】13万人が参加 3時間かけてお散歩してみた

介風見聞録にお越しいただき、有り難うございます。介(すけ)です。

毎年恒例の台灣同志遊行(台湾LGBTパレード)が10月31日に行われました。僕もお散歩がてら隊列に参加してきましたので、その模様をお伝えします。

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【今年で18回目 アジア最大級のLGBTパレードです】

アジアで初めて同性婚が認められた台湾。27日には台北市がLGBTなどのセクシャルマイノリティを支援する都市で組織される「レインボー・シティーズ・ネットワーク」にアジアで初めて加入したというニュースもありました。誰もが暮らしやすく、活躍できる社会を目指すダイバーシティへの取り組みが着実に進んでいます。

台北で行われるパレードは今回で18回目。台湾最大なだけでなく、アジアでも最大級のLGBTとして知られ、例年では台湾国内に限らず日本を筆頭に世界各地からも多くの参加者・観光客が詰め掛けます。今年はコロナの影響で海外からの参加者はほぼ皆無となってしまったものの、主催者発表では13万人が参加したということで、例年並みの盛り上がりとなりました。

パレードの路線は数年前まで総統府前のケタガラン大通りから西門、台北駅を通るルートが多かったのですが、昨年は信義エリアの台北市政府前から台北市を東西に貫く忠孝東路を通ってケタガラン大通りまでのルートとなり、今回は台北市政府前から仁愛路を西進し、敦化南路のある仁愛圓環(ロータリー)で南北の各ルートに分岐し、北ルートは忠孝東路、南ルートは信義路をそれぞれ東進し、市政府前へ戻るルートが設定されました。

【レインボーマーケットや舞台パフォーマンスもぜひ見て行って!】

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パレード自体は14時からの出発となりますが、起点と終点となる市政府前では11時からレンボーマーケットが開かれ、協賛企業やLGBTフレンドリーのアーティスト・ショップなどがブースを開き、関連グッズの販売や情報提供などを行っています。

今年はデリバリーサービスを提供するドイツ企業「フードパンダ」が妙に目に留まったのと、レズビアン向け出会い系アプリの旗をよく見たかなと思います。しかしながらパレード開始直前の13時30分ごろは大混雑の夜市さながら牛歩で進むことも困難となる盛況ぶりだったので、しっかりと見学したい方は早めの行動をお勧めします。

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中央のステージでは随時パフォーマンスが行われていて、会場を盛り上げています。LGBTの支援団体や政治家、当事者、そしてその家族たちの話なども聞いているとたくさんの人たちの尽力や協力、支援があって獲得・実現できた権利と利益なのだなぁと感動します。

特筆すべきなのは女性の地位向上や都市と地方の格差是正、香港問題の解決などを目指す人権団体の参加。LGBT問題の根本は基本的人権の尊重であるわけで、LGBTを専門に扱う団体でなくても、LGBTの支援を自然と行っているこれらの団体の取り組みは素晴らしいなぁと思います。実際、台湾で同性婚が実現した背景には白色テロで迫害された人たちの人権問題を長らく扱ってきた土壌があるから。同性婚実現の際に日本語で出された関連記事や解説をいくつか見ましたが、台湾では早期からLGBTへの理解が広まってきたという記述はあるものの、なぜその理解が広まったのかに対する言及が少なく、この点をぜひ多くの日本人にも理解してほしいなぁと密かに願っています。

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ノリが良過ぎる大好きな後輩


ちなみに、今年総合司会の一人を務めた宜蘭さんは、実は僕の大学院時代の後輩。ドスの効いたよく響く声とユーモアのある喋り方に定評があり、数年前から台北に限らず台湾各地で開かれているLGBTパレードの司会を務めていて、イベント直前にはフェイスブックに「旦那と子供をほっぽり投げてきて清々しいわ!」とコメント。今年もパワフルに現場を仕切ってくれていました。

もう一人の夏立民さんもLGBT界隈では有名な知識人で、ご本人もかなり早い時期に同性パートナーとご結婚されています。そして客家人であり客家語にも堪能。2018年に統一地方選挙に合わせて行われた住民投票で性の多様性に関するテーマを含む性教育の強化の是非を問うた際、国民討論会で推進派の代表として客家語を交えてコメントしていたのは記憶に新しいところ。

というわけで、パレード以外にも注目すると、台湾社会のLGBTが置かれている現状、それに対する取り組みなどへの理解が深められると思います。

【暖かい声援と理解の伝播が楽しいパレード】

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LGBTパレードの参加するのは、LGBT当事者だけではありません。当事者のお友達だったり、サークルの仲間だったり、純粋に支援しているだけの人たちだったり、一般人がたくさんいるんです。お父さんお母さんが子供を引き連れてご家族で参加しているのも今ではかなり見慣れた光景になりました。

今回目についたのは、LGBTの当事者が親御さんとみられる人を連れて参加していたグループを何組か見かけたこと。家庭内でもオープンな気風が広がっているんだなぁと思わせる瞬間でした。

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分岐点では北ルートを選択。忠孝東路の忠孝敦化駅から國父紀念館駅までの間は台北を代表する繁華街の一つ。週末のショッピングや食事を楽しむ人たちで賑わう場所を練り歩くとかなり注目を浴びるのですが、基本的には歓迎ムード一色。

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雑居ビル2階のレストランでお食事していたとみられるご婦人グループから窓越しに手を振られ、暖かい気持ちになりました。パレードの実施を知らずたまたま居合わせた人たちがほとんどだと思いますが、理解が広がっていることを実感できる感動的な場面でもあります。

今回のパレードでは途中、台北市を南北に縦断する光復南路と安和路という幹線道路を横断するため、信号待ちで頻繁に足止めを喰らいました。総統府周辺でパレードしていた時はあまり足止めするということはなかったのですが、それゆえ団子状態になって混雑が助長されている印象を受けました。結局3時間かけて全行程を踏破。後になって先頭集団にいた友人に話を聞くと、1時間30分で帰ってこれたというので、頑張って先頭を目指した方が疲労感は少ないかもしれません。

 

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台湾のLGBTパレードは、台北だけでなく、台中、台南、高雄、花蓮、珍しいところでは苗栗などでも行われていて、LGBT関連イベントではほぼ全国の自治体で実施されています。とても身近な存在になりつつある台湾のLGBT。同性間の国際結婚は、相互互恵の観点から外国人側の国も同性婚を認めていないといけないということで、日本を含む多くの国の人たちが、台湾人パートナーと結婚とできなかったり、やはり存在する差別をいかに解決するかなど、まだまだ問題は山積していますが、もっともっと暮らしやすい社会が実現できればいいなぁと思います。

来年の話をすると鬼に笑われてしまいますが、来年もぜひ参加してみたいなぁと思ったのでした。

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