介風見聞錄

台北に暮らす「介(すけ)」のあることないこと。

【台湾ドラマ】2008年の「ハートに命中!100%」を今になって見た感想

介風見聞録にお越しいただき、有り難うございます。介(すけ)です。

実は今住んでいる部屋にはテレビがありません。でも、加入していますよ、Netflix。友人に誘われグループで加入していて、年間で1200元です。で、少し前に「命中注定我愛你」(ハートに命中!100%)という台湾ドラマを見たので、その感想を書こうと思います。

【史上最高視聴率を叩き出したお化けドラマ】

f:id:KennethQi:20201017020610p:plain

台視官網から拝借

まずはドラマの基本情報から。放送されたのは2008年。三立電視台のいわゆる「偶像劇」(アイドルドラマ)枠で放送されました。主演は陳喬恩(ジョー・チェン)と阮經天(イーサル・ルアン)。

あらすじをごくごく簡単に言うならば「冴えないOLで陳喬恩演じる陳欣怡が、大企業の社長である阮經天演じる紀存希とひょんなことから一夜限りの関係を持ってしまったら、子供ができちゃってさぁ大変。紀存希にはフィアンセがいてどうしよう。」というもの。

ウィキペディア情報によると、最高視聴率は13.64%で、平均視聴率でも10.91%。視聴率1桁が当たり前の台湾テレビ界では恐ろしいほどの高視聴率となり、台湾のドラマ史上最高を叩き出したドラマなんだそうですよ。

【現実離れした世界観で「あるある」だらけのストーリー】

ただ、正直いうと、全部見るのが非常に辛かったです。

というのも、当時からすれば新鮮味があった内容なのかもしれませんが、2020年の観点から見ると良くも悪くも「台湾ドラマあるある」ばかりが目立ち、退屈しがちだったからです。

僕が考える台湾ドラマあるあるはというと「基本的に玉の輿に乗るシンデレラストーリー」「転んだ拍子にキス」「敵対していた相手がものすごく簡単に味方になる」というものなのですが、命中注定我愛你は完全にそのセオリーに沿っていました。

twitterで「台湾ドラマあるある」でキーワード検索したところ「必ず誰かが養護施設出身」「誰か必ず御曹司か令嬢」「誰か必ず拉致されてボコられる」「どれだけ嫌な奴も最後には皆良い人になる」「ヒロインの相手役は大抵イケメンツンデレ御曹司」などなどと、まさにこのドラマのことを言っているのではと思えるツイートがざくざく。これ以外にも「どこかで見たことがある」という展開ばかりで、食傷気味になってしまいました。

ただ、台湾人の書いたブログを拝見すると、この定番のストーリー展開が視聴者にとってはわかりやすく、「天丼」的な面白さを与えていたのではないかと記していて、安定感があったという意味では十分に理解できます。

【とはいえ、やっぱり見逃せない個人的にぐっと来たポイント】

ストーリーの内容はさておき、個人的に興味深いなぁ、見どころだなぁと思った点も少なからずありました。

その一点目は、香港、上海ロケを行い、ドラマの海外輸出を意識していること。

調べてみると、ドラマを作った三立電視台は2000年代から海外市場の開拓を熱心に進めていたようで、最終的には15カ国・地域で放送されたそう。海外でのロケを通じて確実にその地域の視聴者にアピールしていることがわかります。

ちなみに、ドラマが放送された2008年は第1期馬英九政権が5月に発足した年であり、それまで通商、通航、通郵のいわゆる「三通」の制限が緩和され、12月には両岸を結ぶ直行便の運航が開始されるなど、中国との関係改善が大きく進展した年だったんですね。

中国での放送については、「できちゃった結婚」を扱ったり、露骨な性的描写があることでかなりの制限や再編集が加えられたようですが、無事に放送されています。

二点目は個人的に大好きな女優さんである林美秀と鍾欣凌がそれぞれ陳欣怡の母親役と姉役で出演しているということ。

この二人は台湾のドラマ・映画界で名脇役として有名で、普段ドラマや映画を見ない僕でも知っている女優さんです。台湾語を自在に操り、ドラマにコメディ要素を加えたほか、台湾の庶民である陳欣怡のイメージをさらに補強していました。

こういった台湾ドラマに登場する人物は劇中で洋風の生活を送るのがほとんどですが、台湾語を多用する家族が出てきたり、台湾人らしい生活や振る舞いが散見されたことは、台湾人にとっては非常に親近感が沸くものです。この点も非常に革新的だったのではないかなと思います。

三点目は阮經天のツンデレ振りが可愛いということ。

基本的に陳欣怡には冷たい態度をとり続ける紀存希ですが、次第に愛情が芽生え始め、非常に簡単な理由で態度をがらっと軟化させる場面がたびたび登場し、「阮經天、頑張ったんだろうなぁ」と思える吹っ切れた演技は見応えがありました。

四点目は陳欣怡が身ごもった赤ちゃんに緊急事態が起こるということ。

ネタバレになるのであまり深く説明はしませんが、事態の急変に純粋にびっくりしました。全てが結果オーライとなるはずの台湾ドラマで、ここの場面はかなりシリアスに転換し、まさにモニターに釘付けになる展開となった意外さが良かったです。

 

 ちなみに台湾人の友人(複数)に話を聞くと、異口同音に「そりゃその当時のドラマだから、ストーリーの面で日本や韓国のとは比較になんないよね。でも、リアルタイムで見てたよ」との答えが返ってきました。事実として多くの人から支持されていたようです。

また、海外でリメイクされることも多々あり、これまでにタイ、韓国、中国で放送されたほか、日本でも2020年春に「運命から始まる恋 -You are my Destiny-」のタイトルで放送されたばかりだったんですね。

近年台湾では「悪との距離」や「次の被害者」など、非常に優良なドラマが制作されていますが、過去にはこんなドラマも一斉を風靡していたんだということが分かる勉強になる作品でした。今後もう一度見る機会があるかと言われる微妙ですが、一度は見ておいてもいいのではないかなぁと思いました。